ケイタのしゃべり場

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『憎しみが憎しみを呼ぶ』 検証してみた ~桃太郎編 第二夜~

お待たせしました。前回の続きです。

前回までの内容はこちら

『憎しみが憎しみを呼ぶ』 検証してみた ~桃太郎編 第一夜~

 

それでは、お読みください。

むか~し むかし の おはなし。

ももたろう  という  にっぽんいち つよい おとこのこ が いました。

あるひ ももたろうは おともの いぬ さる きじ を つれて おにがしま に むかいます。

しまにすむ わるい おにたち を たいじ するためです。

みごと おにたち を たいじした ももたろう は おにたち の たからもの を もちかえり

そだての おや の おじいさん おばあさん と いっしょ に しあわせ に くらしましたとさ。

めでたし、 めでたし・・・・・・

って、言いたくなるよね?

でもね、違うんだ。

そうじゃないんだよ。

ちっともめでたくなんてないんだもの。

だって、そう――

桃太郎の

はなし

は、終わっていないんだから・・・・・・。

ボクの父さんは鬼ヶ島の長だった。

まだ小さかったからおぼろげにしか憶えてないけど島の鬼たちを従えていつも忙しそうにしてたっけ。

物心ついたときボクにはもう母さんがいなかった。

病気で死んじゃったって聞かされたけどそれ以上の事はなにも知らない。

父さんも、他の鬼たちも母さんのことはあまり話してくれなかったから。

だけど、ボクはそれを不幸だなんて感じてなかった気がするよ。

友達や仲間が大勢いたからね。

うん、これだけは確かかな。

ボクらはみんな鬼ヶ島で平和に暮らしていたんだ。

・・・・・・あいつが島に来るまでは・・・・・・

あの日のことは、はっきりと憶えてる。

見張り役のお兄さんが血相を変えて家に飛び込んできた。

仲間を連れた人間が鬼ヶ島を襲ってきたって。

桃太郎。

――それが、そいつの名前。

報告を聞いた父さんは険しい顔になって他の鬼たちにあれこれ指示を出してた。

そのあと険しい顔のままでボクに言ったんだ。

「隠れてろ、絶対に姿を見せるんじゃないぞ。なにがあってもだ!

大変なことが起きている――

それだけはボクにもよーくわかった。

震えながら頷くボクの顔をもう一度見てから父さんは他の鬼たちと一緒に出ていったんだ。

父さんの言いつけ通りにボクは岩陰で丸まってずっと隠れてた。

遠くのほうから雄叫びや獣じみたうなり声地響きみたいな音が聞こえてきたよ。

怖かった。

ものすごく怖かった。

だから目を閉じていたんだ。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

どのくらいの時間が経っただろう。

いつの間にか音はやんでいて辺りは恐ろしいくらい静まりかえっていたっけ。

ボクはおそるおそる目を開けた。

岩陰に隠れたまま父さんの帰りを待ち続けていたよ。

・・・・・・だけど、、、

いつまで待っても父さんは帰ってこなかった。

不安になったボクは岩陰から抜け出すと音がしていた方へ向かっていったんだ。

・・・・・・。

!!

父さんが、そこに、いた!

真っ赤な血だまりの中でがっくりと膝をついている父さんが・・・・・・!

そして、もうひとり父さんに近づく人影--あれが桃太郎!

鬼ヶ島を襲ってきた人間!

・・・・・・・・・なぜかな。

ボクにはそれがすぐにわかったよ。

桃太郎は血まみれの刀を握っていた。

島の仲間たちの血だ!

父さんの傍らに立った桃太郎は手にした刀をゆっくりと構え直した

父さんが殺されちゃう・・・・・・!

でも、ボクは動けなかった。

喉の奥はからからに干上がって声を出すことすらできない。

父さんと桃太郎はなにか喋っているように見えた。

なにを話しているかはわからなかったけれど。

やがて、桃太郎がきゅうにこちらのほうを振り向いた。

気がつくと父さんもこちらを見ている。

ふたりともなにも言わずにただボクのことを見つめていた。

そして――

桃太郎が血染めの刀を振りあげた。

思わず目を伏せたボクの耳に・・・・・・。

・・・・・・ブンッッッ!

風を切り裂く鋭い音が聞こえた。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

そのあとのことは、よく憶えていない。

ボクの最後の記憶は島の財宝を奪った桃太郎とその仲間たちが引き揚げていく光景だ。

仲間は三人。

奴らの姿もボクのまぶたにしっかり焼きついている。

それは三人、というより三匹のケモノだった。

犬、猿、雉・・・・・・

奴らは勝どきをあげながら大将の桃太郎の後ろを歩いていたよ。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

ボクの、父さんは、殺された・・・・・・。

父さんだけじゃないたくさんの鬼たちが殺された・・・・・・。

桃太郎と、その仲間たちの手で・・・・・・!

記憶はなくても胸の奥に渦巻いていたどす黒い感情のうねりだけは今でも憶えている。

悲しさが生んだうねりではない。

あえて言葉にするならそれは・・・・・・怒りだ。

桃太郎に対する激しい怒りがボクの中で轟々とうねり続けていた。

大切な父さんを殺された。

恨み?

悲しみ?

いや、違う、そうじゃない。

もっともっと激しく、強い怒り・・・・・・?

この怒りの正体は長いことわからないままだったよ・・・・・・。

ボクの修行の日々が始まった。

続く